TPPで食の話となると遺伝子組み換え作物についての話が多くなります。
しかし、その話を周りにしていた所、今の日本でもすでにおかしな種があるという話を聞いて調べていました。その種の名前は「F1」。そして、この「F1」について講演会があるということで、勇んで話を聞いて来ました。
正直、今まで全く知らない分野だったので、まとめに時間がかかりました。間違えているところがありましたら、指摘していただけると幸いです!
講演を聞くまでは、遺伝子組み換えとF1を同一視していました。しかし、それは全くの別物であるということがわかりました。きちんと知っておかなくては…
「種が危ない」 野口勲氏講演会まとめ
◆種とタネ屋の略歴
元禄年間 初めてのタネ屋が誕生明治時代 欧米の種が流入
大正時代 ナスで世界最初のF1野菜誕生
1940年代 アメリカで玉葱のF1品種誕生
1960年代 F1が世界的に増えだす
1980年代 日本の種の海外採種が始まる
2000年代 バイオメジャーが種苗業に進出
◆種の種類
在来種 農民が自家採種した種
固定種 種屋が形質を固形した種
F1種 異品種をかけあわせて作った雑種(first filial Generation→頭文字を取ってF1)
ハイブリッドシードとも呼ばれる
GM種 遺伝子組み換え種
※ハイブリッドは技術が優れているという意味ではなく、雑種。ハイブリッドカーは、ガソリンと電気という異種のエネルギーで走る自動車と言う意味。
◆F1と固定種の利点
揃いが良い(出荷に有利) | 味が良い(伝統野菜の場合) |
毎年種が売れる(メーカーの利益) | 自家採種できる |
生育が早く収穫後の日持ちが良い (雑種強勢が働いた場合) | 多様性・環境適応力がある |
特定の病害に耐病性をつけやすい | 長期収穫できる(自家菜園向き) |
特定の形質を導入しやすい | さまざまな病気に耐病性を持つ個体がある |
作型や味など流行に合わせたバリエーションを作りやすい | オリジナル野菜が作れる |
◆F1とは??
タネ屋ではF1のことを「一代交配種」と呼ぶが、遺伝学の本では「一代雑種」というのが本来の呼び方。F1はまず雑種にする必要があります。一代雑種(F1)の作り方は、それぞれの花の構造によって異なります。1.人為的除雄① ナス科のトマトの例
トマトの花 http://homepage2.nifty.com/healing_space/tomato.html |
除雄とは、雄しべを取り除くことです。
トマトは花が開くと、自分の雄しべの花粉で雌しべが受粉し種を実らせます。これを「自家受粉」と言います。自家受粉はF1には都合がわるいのです。自分の花粉を自分でつけては雑種にはならないからです。そのため、除雄を行います。
花には雄しべと雌しべがあります。雌しべが熟し、受粉可能になる前のつぼみの時に、小さなつぼみを無理やり開き、雄しべを全部引っこ抜いてしまいます。花は雌しべだけの寂しい姿にして、雌しべが受粉可能になった時に、遠く離れた別の品種、ミニトマトなどの雄しべの花粉を取って、指先にくっつけて人為的に受粉させます。
2.人為的除雄② 雌雄異花ウリ科のすいかの場合
スイカの花-解説つきの画像を見つけました http://tanegomi.com/archives/3535 |
雌雄異花とは、雄しべだけがある雄花と、雌しべだけがある雌花に花が分かれており、1つの株に両方が咲くことです。
スイカの花を除雄する方法は、雄花が開く前にピンで止めたり、雄花を取り除き、目的の雄花の花粉をつけていきます。
ちなみに、ボク達がスイカというとシマシマ模様の果実を思い浮かべます。しかし、縞模様のあるすいかは西洋のもので、本来の日本のスイカは、縞模様がないのです。しかし、皮が柔らかく、市場に運んでいる最中に全滅することもあったため、出荷には不向きでした。そこで、F1が登場することとなったのです。
旭大和という在来種のすいか |
3.自家不和合性の利用(アブラナ科の植物専用で、日本のオリジナル・ガラパゴス技術)
自家不和合性とは、被子植物の自家受精を防ぐ数種類の遺伝的性質の総称である。簡単に言うと、自分の花粉では種を付けないということです。別の株からの花粉なら種を作ります。なので、一株で育てても種はつけません。アブラナ科の花 http://shizenkaze.exblog.jp/13481140/ |
ジフンの花粉では種を付けないという特徴は、成熟して開いた花の特徴で、成熟していないうちは受粉します。その特徴を利用し、その株で一番早く開いた花の花粉を取り、その周りのつぼみを開いて受粉させます。
現在では、CO2とミツバチを利用して受粉させる方法を大手は使っているとのこと。
ハウス内の二酸化炭素濃度を3~5%程度に高めると、成熟した菜の花でも自家受粉してタネをつけてしまうのだそうです(現在の大気中の二酸化炭素濃度は0.037%。これまでの地球の歴史上でも0.6~0.04%程度での変動であり、ハウス内の濃度は非常に濃い。人間は酸欠で中にいられないが、ヘモグロビンを持たないミツバチは、そんな中で平気で交配作業をするという)。
◆雄性不稔とは?
すごく難しい言葉です。まず言葉を分解して意味を考えます。雄性とは男性のこと、不稔とは不妊のこと。男性が不妊であるということは、無精子症であるということです。雌しべはあっても、雄しべがないもしくは機能を果たさないことを表しています。雄性不稔の原因は、ミトコンドリア遺伝子の異常だということがわかっています。1925年に赤玉葱(イタリアンレッド)で発見された雄性不稔個体が、戻し交配(Back cross)で黄玉葱に取り込まれ、雄性不稔個体の祖となりました。
雄性不稔の個体は、花粉がつくものと掛けあわせても雄性不稔となりました。母系遺伝で子に伝わることが判明しました。
◆母系遺伝はなぜ起こるか
精子にはおよそ100個のミトコンドリアが存在します。その精子が卵子とくっつきます。卵子内の細胞分裂の過程で精子から運ばれたミトコンドリアは分解されてしまいます。なので、すべてのミトコンドリアは、母親から受けついています。参考:交配種(F1)と固定種の作り方-野口種苗研究所
◆雄性不稔の個体でどのようにF1の種を作るのか
(キャベツや白菜の例)1.ハウスにまず雄性不稔の大根、雄しべのない大根の種を撒きます。
2.さらに、今までつぼみ受粉でやっていた時の父親と母親は1個体のクローンですから、花粉が出るんだけど自分の花粉では種をつけられないというクローンの片親、母親の役をするもの(きゃべつの種)を同じハウス内に一緒に撒きます。同じ時期に華が咲くものを選びます。
3.花が両方咲いた時に、二酸化炭素をハウス内に入れて、二酸化炭素の濃度を上げます。
4.そして、そこにミツバチの巣箱を置いてやります。
5.すると、ミツバチは、炭酸ガス濃度があがった中で、大根とキャベツから蜜を集めに働くついでに、花粉の出ない大根にキャベツの花粉をつけていきます。
自然界では、キャベツと大根では、遺伝子、ゲノムが違いますから、自然界では種が作れません。ところが、炭酸ガスをわ~っと入れることによって、生理が狂った大根がキャベツの花粉で子どもを作ってしまいます。
こうやって、大根50%、キャベツ50%、の雄しべのない子が生まれます。これをまた、翌年撒いて、大根25%、キャベツ75%の雄しべのない孫が生まれ、さらに翌年、大根12.5%、キャベツ87.5%の雄しべのないひ孫が生まれます。
これを繰り返して、やがて、雄しべのない完全なキャベツが生まれます。これが生まれれば、これに花粉がある父親役のキャベツを側に撒いておけば、この花粉で種を取ります。
こうして作られた父親役と母親役を、ヨーロッパやアメリカの種苗会社に送って、これで種を採ってくださいと海外採種をしていく仕組みです。
◆高知県南国市のししとうの話
ししとうで有名な高知県南国市の99%が葵ししとうというF1の種を使っているとのこと。残りの1%は頑固者のじいさんがいて、そのじいさんだけが昔の自家採種した種で作ってるそうです。野口氏が講演会に行った時に聞いた話。葵ししとう
http://www.e-taneya.net/01yasai/03kasai-html/004shishito/0103004023001.html
「雄性不稔を利用したF1」と書いてあります。
◆キク科とマメ科はF1化は進んでいない
マメ科は今のところすべて固定種。キク科は一部のみF1の種があります。花のしくみからなかなか進まないようでうす。
キク科で、レタスはカネコ種苗がF1化に成功し、販売しています。
http://www.kanekoseeds.jp/s-y-ha6.html
◆甜菜もF1
日本の砂糖の8割が甜菜で、2割がサトウキビ。甜菜はF1化が進んでおり、さらにてんさい糖を絞りとった後、搾りかすの繊維質の塊をさらに再利用し、食物繊維として、インスタントラーメンのつなぎや食物繊維入り清涼飲料水などとして、全て無駄なく利用しています。
※サトウキビ
栄養繁殖(胚・種子を経由せずに根・茎・葉などの栄養器官から、次の世代の植物が繁殖する無性生殖である。)のため、種で繁殖しないので、F1にはなりません。
栄養繁殖(Wikipedia)
◆ハイブリッドライス(雄性不稔のお米の種、F1)
お米にはインディカ米とジャポニカ米があります。始まりはインディカ米の原種の中から、一株雄性不稔のものが見つかります。これに、ジャポニカ米のコシヒカリなど、何回も何回も戻し交配(Backcross)をして、両方のハイブリッド品種を作っておいて、最後にこのインディカ米の直す力を持つ兄弟分を最後に掛けあわせて、一代限りお米を実るようにした種が作られました。
ハイブリッドライスは今どういう所で作っているかというと、中国で栽培されている稲の全面積の58%がハイブリッドライスになっているということです。アメリカはお米の39%がハイブリッドライスになっています。これは2009年のお話です。今はさらに増えていることでしょう…
さらに、TPPに参加すると、こういうお米が安く日本に入ってくるんじゃないかと言われています。
ちなみに、ハイブリッドライスの種の値段は、普通のコシヒカリの種籾の7倍するとのこと…
◆ハイブリッドライスを扱う主なメーカー
メーカー名 | 品種名 |
Bayer Crop Science | Arize |
Dupon | |
Monsanto※ | メモ書きが汚くて判読不能(T_T) |
Syngenta | Malakas |
RiceTee | XL7,XL8 |
三井化学アグロ | みつひかり |
※平成19年から、日本モンサント株式会社が開発した「とねのめぐみ」という品種を販売しています。F1種子だと思われます。確定ソースが見つかりませんでした。
日本モンサント株式会社が開発、育成した茨城県産地品種銘柄米 「とねのめぐみ」を株式会社ふるさとかわちが種子販売開始
また、メモ書きが汚いものとは別の名前です。
おなじみのメーカー名がずら~りと並んでいます。
◆世界の種苗会社のランキング
種苗業界の世界勢力図 |
◆放射線育種
例)キク科のごぼう-今のところ雄性不稔の株は見つかっていませんごぼうの種をポットにいっぱい蒔いて、放射線からの距離・何分または何秒放射能をかけるなど、色んなパターンを試します。掛けたポットから芽が出たものを畑に植えてみる。どれかが、遺伝子が傷ついて面白いものが出るんじゃないのか。ここから、短くなっちゃったごぼうができました。掘るのが簡単だから家庭菜園用として売ろうとなりました。
コバルト極早生
http://www.e-taneya.com/item/889.html
品種登録(植物の特許)が15年間。15年経つと誰でも種が採れるようになってしまう。これをもう一度何とかならないかということで、また、ポットに蒔いて、もう一度、放射線をかけました。コバルト照射です。すると、より短くなった上に、アクが無くなった品種が生まれました。
てがる牛蒡
http://www.e-taneya.net/01yasai/02konsai-html/005gobo/0102005042001.html
サラダむすめ
http://www.takii.co.jp/CGI/tsk/shohin/shohin.cgi?area_cd=5&breed_seq=00000216&daigi_flg=0&hinmoku_cd=AGB
開発した業者の販売力は小さいので、名前を自由に変えていいから販売してよといいうことでタキイ種苗に依頼。そこで、名前がサラダむすめに変わり、販売されています。
遺伝子が傷つくと、奇形になってきます。異常になって生まれたのがこのごぼうなのです。
○小粒納豆は放射線育種から生まれたもの
もともと、納豆小粒という在来種に放射線をあて、さらに小さい品種ができました。その品種を使って商品化されたのが小粒納豆です。◆遺伝子組み換え
遺伝子組み換えを行う方法として、パーティクルガン法とアグロバクテリウム法があります。現在はアグロバクテリウム法が主流です。アグロバクテリウムとは、日本語で「根頭癌腫病菌」と言い、要するに細菌です。
土の中にいっぱいいます。バラを育てている人にとっては天敵です。
アグロバクテリウムなどの細菌の場合、核を持っていないので、DNAの大半はムニャムニャとした集まりと、環状の遺伝子を持っています。
アグロバクテリウムの細胞 http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0090a/contents/32020.html |
環状遺伝子はどんな役割を持っているのでしょうか。
隣の個体と情報交換に使われます。例えば、除草剤の耐性を獲得したDNAがあると、その環状のDNAに写して、隣のバクテリアにはいよと受け渡します。そして、隣から隣へどんどん受け渡していくのです。
参考:
遺伝子組み換え作物の基礎知識-日本モンサント株式会社
遺伝子組み換えを考える-東工大
○アグロバクテリウムの発見
1974年、ベルギーのゲント大学のマルク・ファン・モンタギューとジェフ・シェルが、アグロバクテリウムの環状DNA(プラスミド)が植物の細胞をがん化させていることを発見した。◆ターミネーターテクノロジー
ターミネーターテクノロジーについては、本から直接引用します。野口氏から引用は自由にしてくださいと言われました。
現在封印されている遺伝子組み換え特許に、ターミネーターテクノロジーというのがある。これがターミネーターテクノロジーです。
米国特許(572376号)を取得した際のアメリカ種苗業界の雑誌『Seed&Crops』誌によると、この技術は「遺伝子操作により、タネの次世代以降の発芽を抑える技術で、これにより農家による自家採種を不可能にするものである」と定義されている。
ターミネーター遺伝子は「自殺する種子」と言われる。ターミネーターテクノロジーがアメリカで特許をとった直後、日本修行協会の機関紙『種苗界』(1988年8月号)に記事が掲載された。「植物の種子が発芽する際に、組み込まれた遺伝子が毒素を発生して植物を死滅させるこの特許はすべての植物種をカバーし、遺伝子組み換えによってできた植物のみならず、通常の育種方法によってできた植物も特許の領域(スコープ)に含まれる」とある。
自殺する遺伝子が組み込まれた作物の花粉が飛び、その花粉と交配した植物がタネをつける。そのタネが土に播かれ、水を与えられ、水分と温度に反応して芽を出そうとした瞬間、毒素を出して死んでしまう。
要するに、タネをつけても芽が出ない、自殺してしまう遺伝子なのである。
これを作ったのは、ミズーリ州の綿花の種子会社デルタ&パイン・ランドで、特許をミズーリ州農務省と共同取得した。同社は、1999年種苗メジャーのモンサントに18億ドルで買収された。だが、「一社による農業支配に通ずる」と反対されたモンサントは、同年10月に開発計画の凍結を発表した。
「タネが危ない」野口勲著
特許自体はモンサントが持っています。しかし、以下のニュースを見ると分かる通り、バイオメジャー企業の行く末はこのターミネーターテクノロジーでしょう。各社が開発を進めているといっても過言ではありません。
ターミネーター作物が実験栽培される
英科学者メイ・ワン・ホーらによって、英国内の実験用圃場で、ターミネーター遺伝子を組み込んだナタネが栽培されていたことが、このほど明らかにされた。この遺伝子は、次世代の種子が発芽時期が訪れると自らを殺す(自殺する)特性を備えているために、ひとたび遺伝子汚染が起きれば、生態系への致命的な悪影響が予測され、さらには開発企業による種子の独占を促し、農業支配を堅牢なものにするので、世界的に大きな批判にさらされてきた。モンサント社などバイオ企業が商品化を見合わせる旨の声明を出していたいわくつきの代物である。ひそかに実験を進めていたのは、バイエル・クロップサイエンス社とDEFRAである。
〔GM Free Cymru 2003/2/23〕
◆日本での遺伝子組み換え技術はあるのか
「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」に基づく確認について上記リンクは野口種苗研究所の資料ページです。
中身は、農林水産省の文書です。
タキイ種苗の「雄性不稔遺伝子及び除草剤耐性遺伝子を導入したカリフラワー(CF156)の栽培」と「雄性不稔遺伝子及び除草剤耐性遺伝子を導入したブロッコリー(BR891)の栽培」について、屋外での実験栽培を認めている文書です。
日本でも徐々に進んでいることがわかります。
この後、野口氏の仮説として、蜂群崩壊症候群(CCD)と男性の精子が減っていることが、雄性不稔であるF1が原因であるという仮説の話をされました。
この講演会で聞いた話はさまざまな項目があるので、徐々にではありますが、内容を肉付けして項目ごとに記事にして行きたいと思います。
野口種苗
http://noguchiseed.com/hanbai/
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