・軍学共同とは
・軍学共同の具体的な動き
・軍学共同が進んでいるデータ
軍学共同がもたらす日本の軍国主義化
◆軍学共同とは
軍学共同とは大学や研究機関を軍事研究に取り込むこと。軍事研究とは、武器開発や敵国に対して優位に立つことをお目的とする装備開発や戦略研究であり、戦争・戦闘に直接・間接につながる研究のこと。
◆軍学共同が進む背景
●防衛省
2013年12月に閣議決定した平成26年度防衛計画大綱。この中の記述に「大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努めるとともに、民生分野への防衛技術の展開を図る(26ページ 7研究開発)」とあります。これを受け、2014年4月に防衛省には「技術管理班(仮称、2014年4月読売新聞記事)」が設置され共同研究体制を整えるとともに、2014年6月に防衛省は「防衛生産・技術基盤戦略」を策定し、「防衛装備品への適用面から着目される大学、独法の研究機関や企業等における将来有望である芽出し研究を育成するため、防衛省独自のファンディング制度について検討」(11ページ右⑤)と明記。それを受けて、2014年8月軍事技術発掘のため、1年20億円の基金制度を概算要求しました。
●大学の変遷
国立大学は2004年の法人化により、大学経営について一定の自由度を得たはずでした。しかし、10年経った現在、国立大学は文部科学省の顔色をうかがい、何事も文科省に相談してからコトを進めるという体質になってしまっています。それはなぜか。
経営費に当たる一般運営費交付金を年々1%ずつ削減する一方、削減分を特別運営費交付金(特別経費)や各種補助金事業に移して概算要求事項として文科省に個別に申請させているからです。「競争的資金」が個人の研究費に増えていることと、大学単位で他大学と競わせるという競争的に獲得する資金が増えています。その競争的資金の獲得は文科省のメガネに適ったプロジェクトが優先されるために上記の顔色をうかがうにつながってくるのです。
科学研究を行う機関の7割が国立大学。7割という数字を見ると、国立大学の法人化は非常に重要なこととして管理人は捉えています。
●産・官・学の二層構造
よく「産官学の融合」と言われるのだが、実態は産に官が従い、官に学が従うという従属関係があります。国立大学の独立行政法人化によって予算配分方式を大きく変更し、それをテコに産業界に奉仕するために大学改革を加速させていこうとするのもこの構造に起因しています。◆軍学共同の具体的な動き
2013年5月から毎年「宇宙に関する包括的日米対話」が開催されています。参加しているのは、日本は文部科学省・経済産業省・環境省・防衛省・海上保安庁・JAXA(宇宙航空研究開発機構)など、アメリカは国務省・国防省やNASA(第1回)といった面々です。遠隔操作など宇宙基本計画について話し合いが行われています。2014年5月に防衛省C2次期輸送機の不具合問題が起きました。その際に東京大学大学院に所属する教授に依頼しました。しかし、東京大学側は評議会の決定をもとに協力を拒否しました。最終的には、教授が最新の情報を得る目的という名目のもとオブザーバーとして参加しました。
※東京大学における軍事研究はしないという意思決定
新制東京大学においても、南原繁総長のもとで「軍事研究に従事しない、外国の軍隊の研究は行わない、軍の援助は受けない」という原則のもと、大学の再建が進められたところです。こうした原則は、歴代総長に受け継がれ、軍事研究との関連が問題となった1959年・1967年には、東京大学評議会においても明確にこれを禁じることを確認しています。 |
2014年5月総合科学技術会議「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の概要で「米国DARPAのモデルを参考に」するという記述があります。
革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の概要-PDF
※DARPAとは…
アメリカ国防高等研究計画局(アメリカこくぼうこうとうけんきゅうけいかくきょく、Defense Advanced Research Projects Agency)は、軍隊使用のための新技術開発および研究を行うアメリカ国防総省の機関である。
さらに、2015年6月米国防総省主催ロボットコンテストが行われます。参加するのは3チーム(東京大、独立行政法人「産業技術総合研究所」、東京大・千葉工業大・大阪大・神戸大)。日本の大学は初参加です。毎日新聞のニュースでは非常に重要な指摘があります。
DARPAの公式ホームページ(HP)は、コンテストについて「いかなる研究結果も軍事技術の発展に使われる可能性があり、DRCも例外ではない」などと記載し、軍事転用の可能性を示唆する。 ロボットコンテスト:災害対策目的、米国防総省主催 技術、軍事転用懸念 日本の大学、初参加へ-毎日新聞 |
時系列的な記述、引用や注釈を入れたことで読みにくくなってしまって申し訳ありません。ただ、どれも外せない情報として入れました。大学の動きはニュースでもなかなか出てこないし、出てきていてもボクは気づいていませんでした。今後はこの動きにも注目していきたいです。
覚えておきたい言葉としてデュアルユースという言葉があります。
この言葉は民生利用と軍事利用のどちらにも利用できることをいいます。軍事研究をしていても民生利用ですと言い換えることもできるし、その逆もまた然りです。科学者は倫理観を持ってご自身の研究をしていただきたいです。
◆実際に進んでいることを示すデータ
防衛省は、大学や研究機関を軍事研究に取り込む「軍学共同」の動きを強めています。例えば、防衛省防衛技術研究本部と大学・研究機関が結んだ共同研究の協定数は、2006年から2012年までの7年間は合計7件でしたが、2013年は4件、そして2014年は既に5件であり、件数が加速的に増加する傾向にあります(詳細はこちらをご覧ください)
締結年月
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技術研究本部
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協力相手
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技術分野・協力内容
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平成26年7月
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陸上装備研究所
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一般財団法人
電力中央研究所 及び 国立大学法人 東京工業大学 |
レーザー計測分野
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遠隔・非接触計測技術
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平成26年6月
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陸上装備研究所
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国立大学法人
千葉大学 |
車両用エンジン技術分野
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エンジンシミュレーション技術
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平成26年3月
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技術研究本部
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独立行政法人
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) | |
・ヘリコプタの技術情報交換
・赤外線センサ等の技術情報交換 | |||
平成26年3月
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技術研究本部
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独立行政法人
海洋研究開発機構 (JAMSTEC) | |
・自律型水中無人探査機分野
・無人航走体及び水中音響分野 | |||
平成26年3月
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技術研究本部
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独立行政法人
情報通信研究機構 (NICT) | |
・高分解能映像レーダ(合成開口レーダ)に関する技術情報交換等
・サイバーセキュリティ及びネットワーク仮想化に関する技術情報交換等 | |||
平成26年3月
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陸上装備研究所
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学校法人
千葉工業大学 |
ロボット技術分野
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3次元地図構築技術及び過酷環境下での移動体技術
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平成26年3月
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陸上装備研究所
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学校法人
帝京平成大学 |
SPRを用いた分析法の精度・検出限界
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爆薬検知技術
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平成25年10月
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艦艇装備研究所
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独立行政法人
水産総合研究センター 水産工学研究所 |
広帯域音響信号分析分野
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水中音響信号処理技術
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平成25年6月
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陸上装備研究所
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国立大学法人
九州大学 |
IED対処技術分野
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爆薬検知技術
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平成25年3月
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先進技術
推進センター |
独立行政法人
理化学研究所 |
化学剤遠隔検知分野
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中赤外電子波長可変レーザーによる遠隔検知
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平成24年11月
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陸上装備研究所
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学校法人
慶応義塾 |
キャビテーション分野
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圧縮性を考慮したキャビテーション現象に係るデータ取得及び数値解析技術の構築
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平成24年 6月
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先進技術
推進センター |
国立大学法人
横浜国立大学 |
群制御及び協調制御技術分野
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無人小型移動体の制御アルゴリズム構築等
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平成20年 2月
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電子装備研究所
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東京消防庁
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通信分野
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ソフトウェア無線機を用いた中継
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平成20年 2月
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艦艇装備研究所
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独立行政法人
海上技術安全研究所 |
艦船分野
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平成18年 6月
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電子装備研究所
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独立行政法人
情報処理推進機構 (IPA) |
情報セキュリティ分野
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技術情報交換
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初めは軍事研究に全く関係していない研究でも、軍事利用できるとなると上記のように技術交流という形で資金が提供されていきます。
このような流れを止めるためにできることとして、Web署名がありますので、紹介します。
◆軍学共同反対アピール署名
軍学共同について記事を書きました。今直接出来る行動として、軍学共同が進んでいる事実を知ることと署名があります。以下のリンクは直接署名のページに飛びます。リンク先のホームや賛同者のお名前やメッセージもぜひ御覧ください。軍学共同反対アピール署名
おすすめの書物です。
軍学共同とは異なりますが、現在の科学についてよく分かる本です。
数時間で読めるものですので、ぜひ読んでみてください。以下のキーワードに引っかかる方はぜひ!
キーワード:要素還元主義、トランスサイエンス、STAP細胞、科学の国家への従属
参考:
池内了氏講演会資料(12月21日文明フォーラム@北多摩)
科学のこれまで、科学のこれから (岩波ブックレット)池内了著
軍学共同反対アピール署名
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