「福島原発の真実 最高幹部の独白」今西憲之氏―2012年05月18日たね蒔きジャーナル文字起こし
(00:25:09)
水野:
「福島原発の真実 最高幹部の独白」このタイトルのご本が今出ております。近藤さん。今日はですねこの本をお書きになったフリージャーナリストの今西憲之さんがこのスタジオにお越しでございます。今西さん、こんばんは
今西:
あーどうもこんばんは、まいどです。どうも
水野:
どうぞよろしくお願いします。そのまいどですという感じと、東電の最高幹部にものすごい貴重な証言をとってきたというこの事実の雰囲気が全然合わないんですけど
今西:
んーまあね
水野:
もっと重苦しい人きはるのかとばっかり思ってました、わたし
今西:
あーそうですかそうですか
水野:
まいどー言うてきはると思いませんでした
今西:
なかなかねー、なんというんですか、どこにおっても年中まいどまいど言うてるので、変わらへんです。福島行ってもまいど言うてましたし、東京電力の近所行っても毎度毎度言ってますねー、はい
水野:
そうやって人の懐にぱーんと飛び込みはるその魅力がこの凄い本につながってるのかもしれません。近藤さん、3.11以降ですね、ほんと地震の直後、その津波が来る前からですね、ずっと一人の東電の最高幹部がメモを原発の中の現場で書き残していた。で、そのメモとともにですね、その時何を感じていたか、何がそこで行われていたのかというのを貴重な証言としてその幹部がしゃべっているんです。これが、どれくらいの幹部かと言いますと、近藤さん、細野原発担当大臣としゃべってるくらいの幹部ですよね
今西:
当時はあの、全体会議というのをやってましてですね、まぁまぁあのー、福島第一原発とかの偉い人というのは、まぁまぁ、えらい上から結構何番目とかいう人はみんなそこに行ってはりましたんでねー。はい
水野:
だから、ま、相当偉い人ですわ
今西:
まぁまぁまぁまぁ、一言で偉い人
水野:
偉い人です。その人のお名前を出すことはできないですが
今西:
そうですね。ちょっと、今言うたらえらい怒られますさかいな
水野:
あのー、まぁその人がいろんなことを本当に、えー、ここまできっちり証言するかと、まぁ、例えばメモの一部をご紹介するとですね、こんなメモがありますね。「怒る・拳」。これは誰が怒って誰が拳かって、吉田所長ですね
今西:
そうですね。その部分はね、はい
水野:
吉田所長の「怒る・拳」。「本店現場を無視ばかり」。東電の本店と現場とが全然違うところを見てたという話
今西:
はい
水野:
あるいは、「おわりかさいごまでやる」。これ全部ひらがなです
今西:
はいはい。それはほんとそのままその通りでしたね、はい。全部ひらがなでしたね、はい
水野:
漢字なんか書いている余裕なんかない
今西:
そうですね。もう、それは、まぁまぁそれは印刷してあるんでそういうあれなんですけども、ま、実際その字体なんか見ましても、かなりこうね、手で震えてるような部分がありましたね、その部分は
水野:
震えてますか。はぁ。これだけの証言を取ってこられるには、ものすごい信頼関係がないと無理だと思うんですけど
今西:
そうですな、はい
水野:
どういう形で…
-->
今西:
まぁね、当時、意外とあのー、なんというんすかね、あのー、マスコミは原発が危ないということであんまり近くには行ってなかったんですよね。基本的には東京電力や政府の記者会見ばかり行っておったんですよね
水野:
そうでしたねー
今西:
だからあのー、福島のほうは意外とマスコミ少なかったんですよ
水野:
で、今西さんそこへある意味つっこんでいったんですよね
今西:
ま、つっこむ言うかね、まぁ、ただま、そこをねボクはいわき市を拠点にしてたんですが、まぁまぁあの、普通に生活している人もかなり多かったの、多かったので、まぁまぁそんなにあれではなかったんですが
水野:
いや、せやけど、あの原発の敷地内、そして原子炉建屋の中にまで行ってはるやないですか
今西:
そうですね。まぁそれはその偉い人が連れて行ってくれましたんでね、はい
水野:
で、普通だったら近藤さん。東電の偉い人がですよ、フリージャーナリストを中へある種招き入れる、どうぞと。ちょっと難しい話ですよね
近藤:
それはそうですね。どういうことでそうなったんですかね
水野:
どういう思いだったんですか、この幹部の人は
今西:
んままぁ、一言で言うと要するに東京電力の本店の記者会見ですとか政府の記者会見と現場の状況があまりにも違う、んでー、あの、ちゃんと発表しとれへんと。だから、あんたあの実際見に来て書きなはれと、まぁそういうことですわ
水野:
ある意味内部告発のような気持ちがあるというか、現場と全然違うことばかりが表に出ているやないかと、そこをちゃんと正したいんだという思いがあった最高幹部がいたということ
近藤:
でも、そこを選ばれたのはすごいじゃないですかね、今西さん
今西:
あーいえいえ
水野:
なんで今西さんが選ばれたんですか
今西:
なんでですかね。あのー、その当時あんまりマスコミがいわき市なんかにほとんどいなかったんですよね。ま、希少価値あったんちゃいますかねー、はい
水野:
本来行くべきところに今西さんはいらっしゃったんだと私は思いますー
今西:
はい、ありがとうございます
水野:
非常に怖かったでしょうし、いろんなものをまざまざとご覧になったわけですよね
今西:
そうですねー
水野:
壊れた建屋など。私ら見ている映像って、ま、一方向からパンと写真を見せられたりなんてのが多いんですけど、いろんな方向から見てはりますやんか
今西:
そうですね。まぁ360度、あのー例えば4号機だとか3号機だとかを見ましたですねー
水野:
どうですか
今西:
あのー要するに一言で言うと、テレビとか東京電力が出している写真なんかの映像っていうのはものすごくうすっぺいらいんですよね
水野:
うすっぺらく見える
今西:
はい。やっぱり現場に行くと現場の迫力ってのは全然違いますし、まぁ始めていったときに思いましたね。それまであの東京電力だとか政府の出している写真だとか映像からは比べ物にならないような迫力。完全にだまされた思いましたね
水野:
完全にだまされてたんだとその場で思われた
今西:
思いましたね。事故を小さく見せようとしてるんだなというのはすぐわかりましたね、はい
水野:
そうですか。つまり言って見ると、そんな言われてるような小ささの事故ではないということを身をもって感じられたわけで、その、そうした経験を積みながら今西さんが得てらした証言、近藤さん、ちょっとあの一部分あたし読ませていただきたいところがあるんですよ。これたぶん、新しい工程表が出た7月ぐらいのお話だったと思うんですけど
今西:
はい
水野:
こういうことを最高幹部が告白してらっしゃるんです。
「ふくいち(福島第一原発)から本店には毎日膨大な量の情報が報告されているが、今国民に公表されているのは10%いや1%くらいかもしれない。実際現場は当初からメルトダウン・メルトスルーの可能性があると情報を上げても本店(東電の本店)は発表しなかった。一連の発表を見ていると、派閥や上司との人間関係など、社内でしか理解できない力学が働いているように思える。というのも、うち東電はとにかく風通しが悪い組織でいろんな人間が陰から口を出してくる。現場と本店は衝突ばかりしている。ある本店幹部は情報公開を巡って、こんなことを言っていた。そんな情報が保安院や政府にわかると大変なことになる。問題がますます拡大するばかりではないか。そして、最後には私の立場や出世はどうなるんだ。君はわかってるのか」
こんなくだりがございます。今西さん。えー。ど、どっから伺ったらいいんだろう。派閥や上司との人間関係ってなことが、3.11以降の東電の中で…
今西:
そうですね。逆に東京電力の本店なんかでもですね、現場が分かってないからそういうようなことが平気で言えるんですよね
水野:
私の立場や出世はどうなるんだ
今西:
そうなんですね。あれに、もうちょっと付け加えればですね、いや私は退職金もあるんだと言ってた人がいます、はい
水野:
あー、退職金が減らされたら困るんやと
今西:
んー、減らされたら困る、退職金もらえへんかったらどうするんやと、言うことも言いましたね
近藤:
やっぱり、追い詰められた時、そのままの実態が出るんだね
水野:
うん。普段の組織がどうであるかってことが、凝縮されて出てますね、この言葉に
今西:
そうですね
近藤:
そうですね。何をどこ向いて仕事してるんだっていう感じだね
今西:
そうですね。完全に内向きの仕事ばっかりですよねー、はい
水野:
内向きってことで言うとね、例えば、えーと、海水をすぐに入れてとにかく水で冷却しなきゃいけないね、でないとどんどん悪いことになってしまうから。で、水とか言うてる場合じゃないから水を供給する電源がないから海水を入れようと言って現場はいるのに、海水を入れるのをやめろという話があった。あるいは、もともと海水を入れろというゴーサインもなかなか出なかった
今西:
そうですね。まぁまぁ海水を入れてしまうと、ももぅ、その時点で廃炉になってしまいますから
水野:
もうその炉は使えない
今西:
そうですね。そうすると、まぁまぁ、福島第一原発はほとんど減価償却は終わってますから、発言したら発電するだけ儲かるんです。簡単に言うたら。商売繁盛ですわ
水野:
40年使ったからあとは儲かるのみなんですね
今西:
そうなんですよ。だから、あのー、海水入れたらえらいことですわ。商売繁盛ではなくなりますから。はぁー
水野:
ダメになったらどうしてくれんねんという
今西:
そうですそうです
水野:
本にあったと思いますけど、もう一個新しいの作ったら数千億円いるやないか
今西:
そうですね。んでまぁ、その新しいの、単純に設備だけですからね。そうすると、それ以外に当然また賛成反対とかいろんなあれがあるわけですから、そのプロセス考えると1兆円とかまたそんな金額になってしまうということですよね。また、当然それ減価償却していかないといけないですから、だからまぁ、古い炉だと減価償却が終わってるから、もう儲かる一方
水野:
そうか。だから余計に海水を入れられないんだ、商売としてはね
今西:
そうですね。ということと、あと1点言えばですね、そんな発想がない。事故なんてないという前提でずっと来ましたから、いくらなんでもそんな海水まで入れんでええやろという思いが本店にはあったようです
水野:
次はちょっと政治家に関してのところがありますので、もう一回読ませていただきます。7月去年の7月に新しい工程表発表されたんですよね。そこではですね、廃炉に向けた準備を後3年でするという風に書かれていたんですよね。近藤さんちょっと読ませてくださいね。
「なぜ新工程表に3年という数字が出てきたのか正直私にはわからない」。これ最高幹部の言葉ですよ。「正直私にはわからない。この数字が入ったのはそれこそ政治主導だ。経産省つまり官僚指導かもしれない。いずれにしても、まだ原子炉を安定的に冷却することもできていない状況で、3年で廃炉準備と断言するのは到底無理な話だ。また、この新工程表では、外部への放射性物質の放出量が事故直後に比べて200万分の1になったと評価している。しかし、これにはウソがある。爆発時に出た本当の放射線量ははっきりとしてない。いったい何を基準にしてこの数字が出てきたのか全く分からない。7月19日に新工程表を発表した前後、細野大臣がテレビのニュース番組などをはしごして出演しているのを見た。これも、大丈夫、もう爆発はないなどというばかりで、確固たる根拠はなく、具体的な数値なども示さなかった。正直、何を言っているんだろうか、説得力はないなと思った。経産官僚の操り人形と改めて認識させられた。何のためにテレビ出演したのだろう」。近藤さんいかがですか
近藤:
いや、現場の声って、やっぱりなんか、そこになんか真実がありそうな気がすんなー。んー
水野:
3年てわからないて東電の幹部が言うわけですよ。で、この、なんでじゃあ、現場の人たちはこんな工程表は無理だ嘘だとおっしゃってても、通っていくのか。どうですか、今西さん
今西:
まぁ、要するに、まぁ東京電力、まぁ原発が爆発した瞬間に、まぁまぁ膨大なお金が必要なことになったわけですよね。そうすると、政府、国に助けてもらうしかないわけですよね。やっぱりその中で、あの、どうしてもほんとはそこで政治主導になればいいんですが、なかなか今の政権はそういうわけにいかない。そうすると官僚主導になる。んで、官僚の顔色を伺いながらそういう形にもっていくということですね、はい
水野:
あの、びっくりすることいっぱいありますけどね、例えば、1号機の状況を、あの原子炉の上のところに建屋のところにカバーをなんか付けたんですよね
今西:
そうですね。カバーリングっていうのをずっと工事やってますね。あの放射線量を防ぐわけ、ああの、放射線量の数値を抑えるためにね
水野:
抑えるためにって言われてますけど、実はただそれだけじゃないっていう話が出てますね
今西:
そうですね。まぁあれ、例えばインターネットであのGoogleのですね、あの、衛星からの写真が写りますよね。写ったら全世界に配信されるからかっこ悪いじゃないですか
水野:
1号機のすべてが写ってしまう、上から
今西:
そうですね。また、かっこ悪いですしね、東京電力は海外からもお金を多少調達してたりとかしてますから、あの評判悪なりますわね。商売繁盛ならんですわ。だから、早めにやったほうがええんちゃうか言うて、一生懸命工事してはりましたね、確かに
水野:
これは政府もええ考えやと、まぁうなずいたというくだりもありましたね
今西:
そうですね。まぁまぁカバーリングはいずれしないといけないと最初から想定はしていたんですけど、ただまぁ、あのー、チェルノブイリの時代にはそんなGoogleみたいなものはなかったですから、はい
水野:
そうかー。はぁ。上空から見えてしまう一つのことがあります。それから、あのー、避難についてもね、どうあるべきかという話が出てくるんですけども。20キロ圏内ぐらいの人は逃げているんだろうと思っていたっておっしゃってますね
今西:
そうですね
水野:
最高幹部の方がおっしゃってるのは、ベント、これは水蒸気を逃しましたけど、これをするのは本当に最悪の事態で、ベントをしてしまえば大量の放射性物質が出ることが分かってる。それをするかどうかというときに、この幹部の方はもうすでにもちろんのこと、近所に住んでらっしゃる方は皆さん避難しているはずだと。少なくとも大体20k圏内ぐらいの人は逃げているんだろうと思っていたっておっしゃってますね
今西:
そうですね。20キロというのも最低で、ひょっとしたら30いや50でもおかしくないなというくらい
水野:
50キロくらい逃げていてもおかしくないなとこの人は語ってるんですよね。で、少なくとも20キロはもう逃がしているんだろうと現場では思っていた。しかしながら、その最初の段階では2キロ圏内だった
今西:
そうですね。2キロが、2キロになり、まぁ3キロになり、10キロになり、本当に小出しでしたね。その時は、はい
水野:
だから、このあたりについては、もっと早くに、広い地域の人たちを逃がすべきであったとそれについてはもっと強く言うべきだったという反省を述べてらっしゃいますよね
今西:
そうですね。それとやっぱりそこにもですね安全神話というのがか関わってくるわけですよね。いくらなんでも日本が危機になるような事態はないという根拠のない安全神話
水野:
根拠のない安全神話
今西:
全然ありませんわ、はぁ
水野:
ないということも認めてらっしゃいますよね
今西:
そうですね
水野:
想定外なんかじゃなかったとおっしゃってますね
今西:
そうですそうです。んー、あのーね、まぁまぁ、原発ね、結局1000年に1回しか事故は起こらんとさ散々ん言っていたのに、たった40年ちょっとくらいでもうこんだけ事故起こってるわけですからね、はい
水野:
それからあの、地震か津波かって話ありますよね、近藤さん。津波でだけ壊れたという風にしたい人たちもいるようですが、地震の段階でもいろんなことがあったんじゃないかとそこがはっきりしないとほかの原発の再稼働にかかってくるわけですね。その大切なところもこの幹部の方証言してらっしゃいますね、今西さん
今西:
そうですね。あのー、例えばですね、5,6号機なんかはですね爆発はしてないわけですよね。けど、やっぱり地下の部分で地割れがしてですね、かなり水が地下水が入って来たりとかしておりますよね。とかですね、あとまぁまぁ、4号機なんかのアスファルトの部分がみればわかるんですけど、完全にめくれ上がって、もうあの、下から土が見えてる。ももぅ、明らかに地震でアスファルト、アスファルトその建屋の境目あたりが崩れて、でそういうもうむき出しになってるとかですね。そういうのあっちこちに見られますよね
水野:
この最高幹部の方は、例えば、福島市や郡山市というような多くの方が住んでらっしゃる都市部も避難地域にするべきだということもおっしゃってますね
今西:
やはりあのー、こういう事故初めてですから、それにやっぱり、放射能と人体の関係っていうのは、まだやっぱり、あのーチェルノブイリの事故を見てもわかるように、世界中で確固たるものってないんですよね、その影響というのは。そうすると、まず、あのー、広い範囲で避難をして、ちょっとずつ狭めていったほうがいいんじゃないかということをおっしゃいました
水野:
こうした現場の声が本当に全然、ちゃんとした施策とならないでここまで来てるということが分かるご本で、今日後ほどこのご本のプレゼントもみなさまに差し上げようと思います。「福島原発の真実 最高幹部の独白」。今日はジャーナリストの今西憲之さんにお越しいただきました。ありがとうございました
今西:
どうも、おおきに。すんませーん
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ラベル:
今西憲之氏,
書き起こし,
福島第一原子力発電所
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